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福島地方裁判所 昭和63年(わ)11号 判決

国籍

韓国

住居

福島県双葉郡浪江町大字権現堂字新町六五番地

遊技場経営

大野政雄こと

陳義根

一九二六年一一月一三日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官赤松幸夫出席のうえ審理をし、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年及び罰金一、六〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、福島県双葉郡浪江町大字権現堂字新町六五番地に居住し、同所において「浪江会館」、同県相馬市中村字砂子田一七九番地の一において「ダイエー相馬店」、同県いわき市四倉町東二丁目一六七番地の二において「ダイエー四倉店」の各名称で遊技場(パチンコ店)を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、売上げ及び雑収入を除外するなどの方法により所得を秘匿したうえ、

第一  昭和五八年分の実際総所得金額が五七、二四九、〇六〇円あったのにかかわらず、昭和五九年三月一〇日、福島県相馬市中村字曲田九二番地の二所在の所轄相馬税務署において、同税務署長に対し、その総所得金額が五、一五六、五一〇円で、これに対する所得税額が六一四、四〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により昭和五八年分の正規の所得税額二九、一六三、〇〇〇円と右申告税額との差額二八、五四八、六〇〇円を免れ

第二  昭和五九年分の実際総所得金額が四〇、九〇六、二一三円あったのにかかわらず、昭和六〇年三月一三日、前記相馬税務署において、同税務署長に対し、その総所得金額が一二、六三四、〇〇九円でこれに対する所得税額が二、九二四、九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により昭和五九年分の正規の所得税額一八、二一二、一〇〇円と右申告税額との差額一五、二八七、二〇〇円を免れ、

第三  昭和六〇年分の実際総所得金額が三五、三三六、八九四円あったのにかかわらず、昭和六一年三月一三日、前記相馬税務署において、同税務署長に対し、その総所得金額が一二、一八一、八〇三円でこれに対する所得税額が二、七四三、七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により昭和六〇年分の正規の所得税額一四、七四五、〇〇〇円と右申告税額との差額一二、〇〇一、三〇〇円を免れ、

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の大蔵事務官に対する上申書二通

一  被告人の検察官に対する供述調書

一  検察事務官作成の電話聴取書

一  大野重男こと陳重男、山本芳子、福田明美、鈴木猛、武藤邦雄の検察官に対する各供述調書

一  福田明美、安達孝司、山本芳子、(二通)に対する大蔵事務官の各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の売上調査書、期首商品棚卸高等調査書、減価償却費等調査書、借入金等調査書、青色申告控除額調査書、青色専従者給与調査書、事業専従者控除調査書、利子所得等調査書

判示冒頭の事実につき

一  被告人に対する大蔵事務官の六一、九、一八付、六一、一一、一七付各質問てん末書

一  検察事務官作成の六二、一二、一二付捜査報告書

判示第一の事実につき

一  押収されている昭和五八年分の所得税確定申告書一枚(昭和六三年押第九号の一)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(自昭和五八年一月一日至同年一二月三一日)

判示第二の事実につき

一  押収されている昭和五九年分の所得税確定申告書一枚(前同号の二)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(自昭和五九年一月一日至同年一二月三一日)

判示第三の事実につき

一  押収されている昭和六〇年分の所得税確定申告書一枚(前同号の三)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書(自昭和六〇年一月一日至同年一二月三一日)

(法令の適用)

判示所為 いずれも所得税法二三八条(懲役と罰金の併料)

併合加重 懲役刑につき刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い第一の罪の刑に加重)

罰金刑につき同法四五条前段、四八条二項

労役場留置 同法一八条

執行猶予 同法二五条一項

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 芥川典正)

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